「課題ありますか?」では動かない

「何かお困りごとはありますか?」
「うちのプロダクトには、こんな機能があるんです」

営業の現場では、今でもよく聞くやりとりです。
でも、こうしたよくある営業スタイルで顧客が動くケースは、年々減ってきています。

なぜなら、「課題」レベルで動く領域はもう飽和しているからです。
課題が明確な領域では、すでに対策されている。
逆に、解決されていない領域には、課題が見えていない/構造が複雑すぎるという別のハードルが存在します。

単発型の問題と、構造型の問題はまったく違う

たとえば「メールの誤送信に困っていませんか?」という問いかけ。
これは明快です。
誤送信は誰でも困るし、管理部門も現場も意識している。
「添付ファイルの誤送信を防げます」というソリューションがあれば、そのまま導入検討に進みます。

このようなテーマでは、営業スタイルはシンプルに「機能説明型」で十分機能します。

一方で、たとえば「パートナー支援」や「人材育成」など、組織をまたぐ複雑なテーマでは、まったく話が違ってきます。

二つの問題の性質の違いを整理してみましょう

項目

メール誤送信のような単発テーマ

パートナー支援設計などの構造的テーマ

問題の性質

明確で単発

曖昧で構造的

認知レベル

顕在化している(誰でも気づく)

潜在的・分散的(誰も言語化できていない)

原因

局所的(手順・設定・確認漏れ)

組織横断・KPI・文化・設計の欠如

解の形

機能で“封じる”ことができる

解釈し直し・設計し直しが必要

有効な営業スタイル

ソリューション提案型で十分

イシュー形成型でなければ刺さらない

なぜ「イシュー型営業」が必要なのか?

ここまでの表からわかるように、
解こうとしている問題の構造が違えば、営業のアプローチも変える必要があるということです。

問題が明確であれば、ソリューションを提示すればいい。
でも、問題が構造に埋もれている場合、そもそも顧客自身が課題を言語化できていません。

だからこそ、私たちの営業はこう始めます。

イシュー型営業とは何か?

「何を売るか」よりも「何を問うか」から始める営業スタイルです。

「イシュー」とは、「本当に解くべき問い」です。
イシュー型営業とは、機能紹介でも、ヒアリングでもなく、
顧客とともに問いを立てるところから始めるアプローチです。

たとえば、こんな問いかけがそれにあたります。

  • 「現場への支援って、誰に・いつ・何を届けるかって、明確に決まってますか?」
  • 「現在提供している支援と、成果ってどうつながっていますか?」
  • 「支援の成果って、誰が責任を持ってるんですか?」

こうした問いに対して、顧客がふと黙り込んでからこう言います。

……そう言われると、決まってないかもしれませんね。」

これこそが、イシューが立った瞬間です。

イシューが立った瞬間、何が起きるのか?

この「問いが立つ」瞬間には、商談の構造が根本的に変わります。

  1. 顧客は、営業を「売り手」ではなく「伴走者」として見るようになります。
  2. 比較検討ではなく、「この問いに答えられるのは誰か?」という視点で検討が進みます。
  3. 社内の動きが変わります。話が上に上がり、関係者が巻き込まれ、決裁に近づいていきます。

つまり、イシューが立つと、提案が顧客の行動につながるフェーズに入るのです。

課題ヒアリング型営業との決定的な違い

「課題ありますか?」と聞く営業は、
顧客に「正解を持っていてほしい」と期待しています。

でもイシュー型営業は、
「正解ではなく、問いから一緒に見つけていく」スタンスを取ります。

それが、構造的なテーマにおける営業の本質です。

まとめ:営業とは、問いを売る仕事である

「何を売るか」よりも、「何を問うか」。
それを営業の中心に据えることで、はじめて顧客の思考が動き、組織が動き、変化が起こります。

イシュー型営業とは、顧客とともに問いを立て、構造をひも解き、変化を設計する知的な営みです。

そして、今の時代に選ばれるのは、その問いを届けられる営業です。