営業やマーケティングの世界では、「行動をKPIで管理する」のは今や当然のことです。
では、パートナーセールス、あるいはチャネル担当の仕事はどうでしょうか?

  • パートナーへの資料提供
  • トレーニングの案内
  • ポータルのコンテンツ整備
  • サポートナレッジの拡充
  • 提案プロセスの同行・支援

一見すると、こうした活動は 間接的な動きに見えるかもしれません。
だからこそ、「やっていても数字に直結しない」「頑張りが見えづらい」と扱われがちです。

しかし一方で、北米の一部のSaaS企業では、この支援活動を明確にKPIとして設計・評価しているケースがあります。
なぜ、彼らはここまで行動ログとKPI”にこだわるのでしょうか。

そこには、3つの明確な理由があります。

理由1:「支援活動=売上に貢献するもの」という明確な思想

北米企業では、チャネル戦略が「Go-to-MarketGTM)」の一部として明確に定義されていることが多く、
パートナーを リードや案件を生み出すセールスチャネルとして扱う姿勢が強い傾向にあります。

つまり、支援活動は補助業務ではなく、トップライン(売上)の一部を担うレバーとして設計されているのです。

たとえば:

  • トレーニングを完了した代理店の商談化率は平均の3.2
  • 営業支援ポータルの閲覧回数と提案件数に相関
  • PRMポータルに一定期間アクセスがないパートナーは、売上寄与がほぼゼロ

このように「支援の消化度」=「売上との相関を持つ実務指標」という認識があるため、
「支援されたか」ではなく「支援を使ったか」「行動につながったか」が、自然にKPIとして追われるのです。

理由2:属人的な成果を再現可能な仕組みに変えるカルチャー

北米では、いわゆる「スーパーパートナー」の成功事例に依存しすぎることを嫌い、
成功をモデル化し、他のパートナーに再現させるという発想が組織的に強く根付いています。

そのため:

  • トップパートナーがどの資料を使っているか
  • どのタイミングでキャンペーンを活用したか
  • どのチャットボットを参照して提案準備をしたか

といった成功の構成要素を行動ログで収集し、それをベースにナーチャリング施策を設計します。

再現性があること=スケーラブルであること。
スケーラブルであること=成長戦略に組み込めること。

こうした思想が、支援ログのKPI化を「成長投資の一環」として扱う土壌をつくっているのです。

理由3:マルチチャネル/マルチリージョン構造における“フェアネス”の担保

米国ではパートナー数が数百・数千におよぶケースも珍しくなく、
地域・言語・業種ごとにパートナーの支援状況が異なる構造になります。

このとき、「誰に、何を、どれだけ支援しているのか」を定量的に記録していないと、以下のような問題が起こります:

  • 営業から「支援してない」と言われてしまう
  • 「成果が出たのはパートナーの手柄なのか、支援の成果なのか」判断できない
  • 投資対効果が不明で、予算が通らない

そのため、支援活動をKPIで管理することは、社内・社外両面の説明責任を果たすための設計要件になっています。

KGIとの接続:KPIは“支援者のため”ではなく“組織の成長指標”になる

KPI化の背景にはもう一つ、極めて戦略的な視点があります。

支援行動がKPIとして整理されることで、
以下のような構造が組織として管理できるようになるのです。

KGI(年間パートナー経由売上) 

  

KPI(支援消化率/トレーニング完了率/コンテンツ活用数) 

  

施策(特定支援パッケージの投入/未達代理店へのアラート/優良事例の横展開)

このように、「支援ログ→KPI→KGI」という連鎖が明示されているからこそ、
支援活動は数字の会話に参加できるのです。

おわりに:「支援は見えないから評価できない」は、もはや過去の話

支援活動は、本来「成果に貢献している」領域です。
それにもかかわらず、多くの企業では未だに記録されない業務として扱われている。

北米企業がPRMや支援ログに投資する理由は、
単に効率化のためではありません。
再現性・説明責任・スケーラビリティという、ビジネスの根幹と支援を接続させるためです。

「支援は頑張っているけど、報われない」
そんな構造に悩んでいるなら、まずはKPIという視点で記録し、語れる支援に変えるところから始めてみてはいかがでしょうか。