「資料は送っています」
「キャンペーンも案内しました」
「動画のURLも共有済みです」──

にもかかわらず、まったく反応のない代理店がいる。
連絡しても返ってこない。ログも残っていない。何をしているのか分からない。
──
そんな状態に、心当たりはありませんか?

このとき、多くの担当者が抱くのは「やる気がないのだろう」「関心が薄いのかもしれない」といった印象です。
でも本当にそうでしょうか?

彼らは動いていないのではなく、見えていないのかもしれない。
それが、今のチャネルビジネスにおける最大の盲点です。

なぜパートナーは“見えなくなる”のか?

まず、構造的な問題があります。
営業活動はSFAで、マーケティングはMAでログ化され、CRMで顧客接点が統合される時代。
それでもなお、パートナー支援の領域には痕跡が残らない瞬間が多すぎるのです。

例:こんな状況は、日々起きている

  • 支援ポータルには案内済み。でも代理店はログインしていない
  • 資料は配布済み。でも誰がダウンロードしたか不明
  • 動画のURLを送ったが、再生されたかどうかが追えない
  • トレーニングを案内したが、営業現場には展開されていない

つまり、「支援を届けた」という本部の感覚と、現場の実際の行動の間に、大きな断絶がある。

しかもその断絶は、「ログが残らない」というかたちで、システム上も不可視化されている。

“見えないパートナー”がもたらす5つのリスク

この見えていない状態が放置されることで、いくつものビジネス上のリスクが生じます。

リスク①:サイレントチャーン(静かな離脱)

何の文句も来ない。問い合わせも来ない。
「うまくいっているのだろう」と思っていたら、気づいたときには他社に切り替えられていた。

見えていないということは、関係の低下にすら気づけないということです。

リスク②:支援コストの空打ち

リッチな支援資料を作っても、
高品質な動画を用意しても、
きめ細かい施策を配信しても──

「届いたこと」「読まれたこと」「使われたこと」が記録されていなければ、コストが空中分解していきます。

リスク③:支援の評価がゆがむ

「成果の出ている代理店だけ」に注目して評価をするようになると、
見えているものしか分析できないというバイアスが組織に根づきます。

その結果、成功の再現性は奪われ、改善も迷走していきます。

リスク④:潜在的な“伸びるパートナー”を見落とす

今は非アクティブに見えている代理店でも、的確な支援さえ届けば動き出す潜在層は確実に存在します。
「何が届いていないのか」を追わなければ、機会損失は静かに広がり続けます。

リスク⑤:“支援しているのに成果が出ない”という誤解が社内に蔓延する

可視化されていなければ、「やったつもり」と「届いていない現実」のズレが認識されません。
その結果、「パートナーってやっぱり動かないよね」という短絡的な結論だけが社内に残ります。

“見える化”の3ステップ

では、どうすれば「見えていないパートナー」を見えるようにできるのか?
PRM
などの仕組みを活用した、実践的な3ステップの可視化アプローチをご紹介します。

STEP 1:“見えない”状態を定義する

まずは、どんな状態のパートナーを「見えていない」と判断するのかを明確にします。

例:

  • 過去30日間ログイン履歴なし
  • 支援資料の閲覧回数ゼロ
  • トレーニング受講者ゼロ
  • 提案ツール未使用
  • ポータルからの離脱率が高い

このように、「行動ログがない」状態を客観的に定義することが第一歩です。
定義すれば、アラートを出せるようになります

STEP 2:“なぜ見えていないのか”を仮説分類する

次に、「反応がない理由」を仮説で分類します。

状況

可能性

ログインしていない

そもそもアクセス経路を知らない/初期パスワード未設定

資料未閲覧

メール開封されていない/社内展開されていない

トレーニング未受講

誰が受けるべきか分からない/他業務で後回し

反応なし

興味はあるが、届いていない・分かりづらい

この仮説分岐があると、一律のフォロー施策ではなく、ステージに応じた打ち手を設計できます。

STEP 3:ステージ別の“再可視化アプローチ”を設計する

「見えない=やる気がない」ではありません。
行動ステージに応じて、アプローチのトーンと内容を最適化することが重要です。

ステージ

アプローチ例

未着・未接続

再ログイン導線の送付+1ステップ支援動画

未展開・未認知

担当部署特定→マネージャー向けブリーフ資料送付

未活用

よくある活用例+事例紹介→再案内テンプレ

離反傾向

専任担当からの個別フォロー+簡易フィードバック依頼

このように、支援の出し方を再設計することが、可視化と成果の第一歩となります。

おわりに:「動いていない」のではない。「見えていない」だけかもしれない。

支援の可視化とは、
「反応のある代理店を最適化すること」ではなく、
「反応のない代理店に、なぜ届いていないのか」を見つけ出すことから始まります。

行動ログがゼロのまま動いてくれないと判断してしまうのは、
もしかしたら、こちら側の支援設計の責任なのかもしれません。

支援の価値を最大化するには、まず「見えていない人たちを見る力」が必要です。