
見えないパートナーをどう“見える化”するか──支援の空白を発見する3つの視点
「資料は送っています」
「キャンペーンも案内しました」
「動画のURLも共有済みです」──
にもかかわらず、まったく反応のない代理店がいる。
連絡しても返ってこない。ログも残っていない。何をしているのか分からない。
──そんな状態に、心当たりはありませんか?
このとき、多くの担当者が抱くのは「やる気がないのだろう」「関心が薄いのかもしれない」といった印象です。
でも本当にそうでしょうか?
彼らは“動いていない”のではなく、“見えていない”のかもしれない。
それが、今のチャネルビジネスにおける最大の“盲点”です。
なぜパートナーは“見えなくなる”のか?
まず、構造的な問題があります。
営業活動はSFAで、マーケティングはMAでログ化され、CRMで顧客接点が統合される時代。
それでもなお、パートナー支援の領域には“痕跡が残らない”瞬間が多すぎるのです。
● 例:こんな状況は、日々起きている
- 支援ポータルには案内済み。でも代理店はログインしていない
- 資料は配布済み。でも誰がダウンロードしたか不明
- 動画のURLを送ったが、再生されたかどうかが追えない
- トレーニングを案内したが、営業現場には展開されていない
つまり、「支援を届けた」という本部の感覚と、現場の実際の行動の間に、大きな断絶がある。
しかもその断絶は、「ログが残らない」というかたちで、システム上も不可視化されている。
“見えないパートナー”がもたらす5つのリスク
この“見えていない状態”が放置されることで、いくつものビジネス上のリスクが生じます。
リスク①:サイレントチャーン(静かな離脱)
何の文句も来ない。問い合わせも来ない。
「うまくいっているのだろう」と思っていたら、気づいたときには他社に切り替えられていた。
“見えていない”ということは、関係の低下にすら気づけないということです。
リスク②:支援コストの空打ち
リッチな支援資料を作っても、
高品質な動画を用意しても、
きめ細かい施策を配信しても──
「届いたこと」「読まれたこと」「使われたこと」が記録されていなければ、コストが空中分解していきます。
リスク③:支援の評価がゆがむ
「成果の出ている代理店だけ」に注目して評価をするようになると、
“見えているものしか分析できない”というバイアスが組織に根づきます。
その結果、成功の再現性は奪われ、改善も迷走していきます。
リスク④:潜在的な“伸びるパートナー”を見落とす
今は非アクティブに見えている代理店でも、的確な支援さえ届けば動き出す潜在層は確実に存在します。
「何が届いていないのか」を追わなければ、機会損失は静かに広がり続けます。
リスク⑤:“支援しているのに成果が出ない”という誤解が社内に蔓延する
可視化されていなければ、「やったつもり」と「届いていない現実」のズレが認識されません。
その結果、「パートナーってやっぱり動かないよね」という短絡的な結論だけが社内に残ります。
“見える化”の3ステップ
では、どうすれば「見えていないパートナー」を“見える”ようにできるのか?
PRMなどの仕組みを活用した、実践的な3ステップの可視化アプローチをご紹介します。
STEP 1:“見えない”状態を定義する
まずは、どんな状態のパートナーを「見えていない」と判断するのかを明確にします。
例:
- 過去30日間ログイン履歴なし
- 支援資料の閲覧回数ゼロ
- トレーニング受講者ゼロ
- 提案ツール未使用
- ポータルからの離脱率が高い
このように、「行動ログがない」状態を客観的に定義することが第一歩です。
定義すれば、アラートを出せるようになります。
STEP 2:“なぜ見えていないのか”を仮説分類する
次に、「反応がない理由」を仮説で分類します。
状況 | 可能性 |
|---|---|
ログインしていない | そもそもアクセス経路を知らない/初期パスワード未設定 |
資料未閲覧 | メール開封されていない/社内展開されていない |
トレーニング未受講 | 誰が受けるべきか分からない/他業務で後回し |
反応なし | 興味はあるが、届いていない・分かりづらい |
この“仮説分岐”があると、一律のフォロー施策ではなく、ステージに応じた打ち手を設計できます。
STEP 3:ステージ別の“再可視化アプローチ”を設計する
「見えない=やる気がない」ではありません。
行動ステージに応じて、アプローチのトーンと内容を最適化することが重要です。
ステージ | アプローチ例 |
未着・未接続 | 再ログイン導線の送付+1ステップ支援動画 |
未展開・未認知 | 担当部署特定→マネージャー向けブリーフ資料送付 |
未活用 | よくある活用例+事例紹介→再案内テンプレ |
離反傾向 | 専任担当からの個別フォロー+簡易フィードバック依頼 |
このように、“支援の出し方を再設計する”ことが、可視化と成果の第一歩となります。
おわりに:「動いていない」のではない。「見えていない」だけかもしれない。
支援の可視化とは、
「反応のある代理店を最適化すること」ではなく、
「反応のない代理店に、なぜ届いていないのか」を見つけ出すことから始まります。
行動ログがゼロのまま“動いてくれない”と判断してしまうのは、
もしかしたら、こちら側の支援設計の責任なのかもしれません。
支援の価値を最大化するには、まず「見えていない人たちを見る力」が必要です。
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