
代理店はいつ“離れる”のか──エンゲージメントが切れる瞬間を可視化するUX設計の視点
「最近、あの代理店からパタッと音沙汰がない」
「支援はしていたのに、急に提案が止まった」
「問い合わせも来ないし、教育も受けなくなった」
──そんな“静かな離脱”を経験したことはありませんか?
代理店との関係は、突然切れるように見えて、実は“少しずつ冷めていた”プロセスが背後にあります。
その兆しに気づけなければ、支援は無駄になり、チャネルの健全性は損なわれます。
本稿では、代理店のエンゲージメントが切れる“瞬間”を見える化するUX設計の視点を提示します。
離脱は“結果”ではなく、“プロセスの終点”
サイレント離脱は、気づかないうちに進行している
- 教育をスキップし始める
- キャンペーンメールに反応しない
- 資料ダウンロードがゼロになる
- 担当者との接点が減る
→代理店は、「動かない」ことで意思表示をしている。
多くの企業が、「提案がなくなる=問題」と見ている
しかし、それは“最後の症状”にすぎません。
その前に現れる“細かな変化”をUXとして設計/観察しなければ、手遅れになります。
エンゲージメントが切れる“5つの兆候”
兆候 | UX視点での読み取り方 |
---|---|
① 教育の未完了 | Onboarding UXが途中離脱されている |
② 提案資料の未利用 | 支援コンテンツの導線が“迷路化”している |
③ 担当者への問い合わせゼロ | 気軽に相談できないUXになっている |
④ キャンペーン反応なし | “刺さらない支援”が一方的に続いている |
⑤ ポータルへのアクセス減少 | 習慣化に失敗している/関心が途切れた |
→UXとは、行動を“続けたくなる/止めたくなる”設計そのもの。
離脱の前に“代理店の感情”はこう変化している
- 「ちょっと面倒だな」(UI上の迷い/資料の煩雑さ)
- 「聞きづらいな」(問い合わせ導線の不在/対応遅れ)
- 「自分だけ評価されていない気がする」(一方通行の支援)
- 「やっても意味がないかも」(成果が可視化されない)
- 「だったら、別の製品を推そう」(最終的な“静かな離脱”)
UX設計で“切れる前に気づく”仕組みをつくる
【1】“いつもと違う”を見つけるログ設計
- 教育未完了通知
- 資料DLゼロ継続日数
- 担当者との接触回数(自動集計)
→ これらを週次/月次で“スコア低下”として見る
【2】“見えるフィードバック”の挿入
- 教育完了時の自動称賛通知
- KPI到達率の月次フィードバック
- イベント参加履歴の社内通知
→代理店が「見られている」「応援されている」と感じられる仕組みが、エンゲージメントの予防線になる。
【3】“行動を習慣化させるUX”を設計する
- ポータル内に「次にやるべきこと」をナビゲート
- 提案資料の更新通知はSlackやLINE WORKSで“生活導線”に届ける
- LMSと報酬/評価制度を連動し、「やる理由」をUXに埋め込む
離脱予兆は、システムの外にもある
UXはUIの話だけではありません。
- 営業担当者の声のトーン
- 定例会での発言頻度
- 会話中の温度感
──こうした非言語的シグナルもUX視点で捉えることで、離脱前の空気を感じ取ることが可能です。
最後に:「支援が届いていない」のではなく、「支援が切れている」
エンゲージメントとは、支援内容の“量”ではなく、“続いている感覚”によって保たれます。
そしてそれは、UX設計によって維持・観察・再接続することができます。
- 離脱の前兆はログに出る
- 感情は設計で先回りできる
- UXは、“関係性の予防医療”である
代理店が“離れたあと”では遅い。
切れる前に、切れる兆しに気づけるUXを。
それが、これからのチャネル運営に求められる視点です。