
代理店に選ばれる“体験”はありますか?──支援だけでは動かない時代のチャネルUX設計
「ちゃんと資料も送っているし、問い合わせ対応もしている」
「でも、なぜか提案されない。動いてくれない」
その理由、“支援が足りないから”ではないかもしれません。
製品の差が小さくなり、代理店が複数ベンダーと契約している現代のチャネルでは──
「どの会社の支援が手厚いか」ではなく、
「どの会社が“扱いやすいか” “気持ちよく提案できるか”」が選ばれる決め手になりつつあります。
つまり、今必要なのは「支援強化」ではなく、“代理店の体験(UX)を整える”という視点です。
なぜ今、UXが問われているのか?
支援内容は各社横並び
- 資料はある/動画もある/キャンペーンも打っている
→ 差がつくのは「使いたくなるか」「続けたくなるか」
マルチベンダー化による“選択権の移動”
- 代理店は「提案する製品を選ぶ側」
→ 「選ばれる」ためには体験の総合設計が必要
支援施策が機能しない“ラストワンマイル”
- 本部は整えているつもりでも、現場は「探しづらい」「面倒」
→ “届け方”と“使い方”が支援の価値を左右する
北米ではすでに進む「PX(Partner Experience)」の常識化
米国では、UXをチャネル戦略に組み込む「PX(Partner Experience)」という概念が定着しています。
以下は、実際に活用されている代表的な取り組みです。
領域 | 実践されているUX |
---|---|
オンボーディング | LMS・認定プログラム・1クリック資料導入 |
提案支援 | すぐ使えるテンプレ/検索性の高いライブラリ |
インセンティブ | ゲーミフィケーション(ポイント、バッジ) |
サポート | Slack/チャットボット連携による即時対応 |
KPI通知 | エンゲージメントスコア可視化、月次通知 |
単なる“サポート”ではなく、「扱いたくなる仕組み」になっている
日本企業が陥りやすい“支援UXの落とし穴”
ありがちな構造 | UX上の問題点 |
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「動画も資料も整えた」 | どこにあるか分からない/見つからない |
「営業が伝えてくれてるはず」 | タイミング・文脈が代理店に届いていない |
「問い合わせにちゃんと回 答している」 | 初動が遅く、“不安”が残る |
「レポートを送っている」 | 一方通行で、相手が“評価された実感”を持てない |
選ばれる体験をつくるためのチャネルUX設計5原則
【1】“迷わせない”導線設計
- 資料・動画・キャンペーンの導線を「代理店の動線」で再設計
- 「とりあえずこのリンク」「最初の3つ」など、行動誘導が鍵→ シンプルで直感的な導線が、支援の活用率を大きく左右する
【2】“提案しやすさ”の演出
- ワンクリックでDLできる提案資料
- 編集可能なトークスクリプト
- 商材レコメンドや、事例まとめなど
→ 提案までの“準備コスト”を最小化することが差になる
【3】“関わりやすさ”の仕掛け
- 担当者と話す以外の選択肢(チャット・FAQ・Bot)
- MAやLMSと連動して「気軽に進められる」支援体験
→ UXとは“声をかけやすい雰囲気”の設計でもある
【4】“フィードバックされている感”の構築
- KPI進捗通知やインセンティブ設計
- 教育受講完了通知とミニ表彰
→ 「自分が評価されている」と感じる代理店は、関与を強めてくれる
【5】“勝手に育つ”流れを整える
- 支援ページにストーリー性を持たせる
- 「次にやること」が自然に提示されるUX
→ UX設計=支援の自動化構造でもある
最後に:“支援の質”ではなく“体験の質”が代理店を動かす
いま、代理店は製品や支援内容だけでは動きません。
選ばれるのは、「扱いやすく」「伝わりやすく」「気持ちよく提案できる」ベンダーです。
それを決めるのは、
- UIではなく「UX」
- コンテンツではなく「導線」
- 支援内容ではなく「支援されていると実感できる瞬間」
パートナーエンゲージメントは、体験設計から始まる。
それが、これからのPRMの常識です。