支援しても動かない。成果も出ていない。

──でも、なんとなく付き合いだけは続いている。

チャネル支援の現場には、そうした惰性の関係が少なからず存在します。

「昔は動いてくれてたんですけどね……
「一応資料は送ってますが、反応はないです」
「営業担当の付き合いもあるので、切りづらいんですよ」

こうした相手に、限られた支援リソースをなんとなく割き続けてはいないでしょうか?

すべての代理店を助けることはできません。
そして、チャネルの健全性を保つには、「どこを切るか」も戦略です。

今回は、支援をやめる判断をどう設計するか──チャーン予備軍の見極め方とその対応について考えます。

「再エンゲージ」が必要なのは、過去に動いた履歴があるから

“止まった代理店”がやっかいなのは、

一度動いていた、という事実があることです。

  • すでに支援コストを投下している
  • 親しみや人間関係がある
  • 過去の成功体験がある(ように見える)

だからこそ、本部としても
「もう一度動いてくれないか」という期待を捨てきれない。
けれど同時に、「また支援するには理由がほしい」とも感じている。
この葛藤に対して、“再エンゲージ戦略”という構造的アプローチを設計する必要があります。

チャーン予備軍とは「静かに離れていく代理店」のこと

チャーンとは、急に起こるものではなく、じわじわ進行する関係の劣化です。
以下のような兆候が複数見られる代理店は、すでに静かなフェードアウトに入っている可能性があります。

兆候カテゴリ

具体的なサイン

反応の低下

メール未開封/ポータル未ログイン/動画未視聴

行動の停止

案件登録ゼロ/問い合わせなし/施策不参加

接触の希薄化

定例の欠席/担当者の異動後に接点が途絶える

情報ニーズの欠如

製品アップデートや販促資料への関心ゼロ

こうしたサインが3カ月以上継続している場合、
「支援の対象として再検討すべき段階」に入っていると考えるべきです。

“撤退”を考えるべき代理店の見極め軸

以下のような3軸で評価すると、撤退・継続の判断が構造化できます。

【1】成果軸:実績の有無とトレンド

観点

判断基準

売上や案件数

過去6〜12カ月間、成果ゼロであるか?

成果の推移

減少傾向が続いているか?停滞が長いか?

【2】関与軸:支援に対する反応

観点

判断基準

情報接触

コンテンツ開封/ログイン履歴が消失していないか?

反応頻度

フォロー施策に全く反応がない期間が長く続いていないか?

【3】将来性軸:今後の回復見込み

観点

判断基準

組織構造

担当者の異動・リストラ等が起こっていないか?

事業戦略との一致度

自社商材との親和性がそもそも薄れていないか?

これらの軸を定量/定性でスコアリングすれば、
「この代理店には、もう支援しなくていいかもしれない」という判断の正当性が説明可能になります。

支援をやめるとは、「縁を切る」ことではない

注意したいのは、撤退とは、関係の断絶ではないということです。

  • 無駄なアプローチを止める
  • 一律の施策から外す
  • 優先順位を下げ、個別対応に絞る

といったフェードアウト設計が重要です。
むしろ「無理に支援されなくなった」と感じさせない形で、
チャネルの健全性を維持しつつ、静かに距離を置く設計が求められます。

撤退の意思表示を社内外でどう扱うか?

撤退判断はしばしば営業・経営・マーケとの利害がぶつかる領域です。
以下のような整理が有効です:

社内に対して

  • 「どの基準で、どこまで対応しないのか」を明示したポリシーを共有
  • 支援対象の見直しはリストラではなく、成長余地の再配分であると説明

パートナーに対して

  • 「当面は能動的アクションがない限り、本部からのアプローチは控えます」
  • でも、情報にはアクセスできる状態は維持する(LMS・ライブラリ・ニュースレターなど)
  • 「再起動の導線」だけは残しておく(例:お問い合わせ窓口/定期フォーラムの案内)

最後に:「離れていく代理店に、説明責任を持てるか」が戦略の成熟度である

支援を始める理由は語れても、
支援をやめる理由を語れるチャネルマネジメントは、まだ少数です。

しかし、支援対象を明確にし、集中と選別を行うには、
手放す判断を論理的に下せる指標設計と運用の仕組みが必要です。

チャネルの質は、「つながりの数」ではなく、
「支援に反応し、成果をともにつくれる関係の数」で測るべきです。

あなたのチャネルにある、静かに離れていく代理店
そろそろ、その存在に明確な線を引く時期かもしれません。