
推進者が1人いるだけでは足りない──代理店内で“支援が広がる構造”のつくり方
「〇〇さんは動いてくれるんだけど、他の営業は全然で…」
代理店支援をしていると、こんな状況に直面することがあります。
「A代理店では、1人の営業担当がよく提案してくれる」
「でも、その人以外には支援が届いていない」
「結果として、案件が偏っているし、全体の成果が広がらない」
このように、代理店内に“点”では支援が届いていても、“面”にはなっていない状態は多くの現場で見られます。
本稿では、1人の推進者に依存しすぎず、代理店全体に支援を広げる構造の作り方を解説します。
前提として、「後発=不利」とは限らない
たしかに、先行ベンダーには以下のようなアドバンテージがあります:
- 営業がトークに慣れている
- 提案テンプレや資料が揃っている
- 問い合わせ対応の導線ができている
- 実績があるので安心感がある
しかし、それでも“不満を抱えている”代理店は少なくありません。
「細かい問い合わせに答えてくれない」
「アップデートについてこれなくなっている」
「結局“売りっぱなし”で、あとは現場任せ」
「定例会もマンネリ化していて新しい提案がない」
→この“倦怠期”にこそ、後発が入り込むチャンスがあるのです。
推進者がいる代理店に起きがちな“限界”
よくある状態 | 問題点 |
---|---|
一部の人だけ提案している | 提案の再現性がなく、属人化している |
教育・支援もその人しか受けていない | 他のメンバーに知識が波及しない |
本部との接点もその人経由 | 異動・退職時に“関係性ごと消える”リスク |
つまり、支援の“面展開”がなされていない状態は、リスクそのものなのです。
「面」に広げるには、3つのレイヤーを設計せよ
代理店内で支援が広がっていく構造には、3つのレイヤーのアプローチが必要です。
【レイヤー1】 “個人からチーム”への水平展開
- 推進者の成功事例を社内で共有
- 「あの営業が使って成果を出している」というストーリーで伝える
- 成果の“見える化”によって「他の人も「使ってみよう」となる導線をつくる
→他の営業に“自分ごと化”させる語り方と導線がカギ
【レイヤー2】 “担当者からマネジメント層”への縦展開
- 支援状況や案件実績を拠点長/営業マネージャーにレポート
- 「他社との比較で成果が出ている」という情報を経営的な視点で伝える
- 拠点単位のKPIや支援目標と接続させる
→現場の行動だけでなく、“組織として動く意義”を示すことで巻き込みが進む
【レイヤー3】 “施策からルール”への定着
- テンプレートやLMSコンテンツの活用 を営業のルーチンに組み込む
- 「新商材が出たらこの教育→この提案資料」のようなガイドライン設計
- 成果が出た施策を“代理店全体に配信する”支援ルールを設ける
→個人の努力から“組織の仕組み”へ移行させる視点が不可欠
※LSM:ラーニングマネジメントシステム
面展開の設計ステップ(実務ベース)
- 推進者の成果ログを整理する(使った資料・提案回数・案件化など)
- 営業全体・マネジメントに展開可能な“ストーリー”に変換する
- 支援テンプレ・教育コンテンツを“自社向けパッケージ”として見せる
- 定例会や朝礼など“既存の場”で共有機会をつくる
- 代理店からのフィードバックを集めて“自走化”の材料にする
よくある“広がらない支援”の3つの特徴
課題 | なぜ失敗するのか? |
成果が“推進者本人の努力”で完結している | 他の人に真似できない/再現できない |
情報が“営業個人”にしか届いていない | 組織として知識共有がされていない |
“使いどころ”が明示されていない | いつ、どんな商談で使えばいいか分からない |
支援の展開は、成果よりも“行動の再現性”に注目することが重要です。
最後に:「動く人」から「動く組織」へ
チャネルの強化とは、“代理店の中に1人味方をつくること”ではありません。
本当に目指すべきは、こうした状態です:
- 推進者の動きが他の人にも伝播している
- 拠点全体で提案や教育が“文化”として根づいている
- 本部との接点が複数あり、“関係性の厚み”がある
点ではなく、面で支援が広がる構造。
それが、再現可能で崩れにくいチャネルをつくる鍵なのです。