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後発でも“巻き返せる”チャネル戦略──他社が入っている代理店への入り込み方

「うちはもうB社さん扱ってるんで、今さら別の製品はちょっと…」

代理店開拓をしていると、すでに他社製品を扱っているパートナーに出くわすのは日常です。

「もう提案トークもB社で固まってる」

「営業担当がB社に慣れてるので…」

「今さら別の教育をやるのは現場がしんどい」

──このような反応を前に、「やっぱり後発は厳しい」と感じたことがある方も多いでしょう。
ですが、後発には後発の戦い方があります。
本稿では、他社がすでに入り込んでいる代理店に対して、後発ベンダーが巻き返すためのチャネル戦略を解説します。

前提として、「後発=不利」とは限らない

たしかに、先行ベンダーには以下のようなアドバンテージがあります:

  • 営業がトークに慣れている
  • 提案テンプレや資料が揃っている
  • 問い合わせ対応の導線ができている
  • 実績があるので安心感がある

しかし、それでも“不満を抱えている”代理店は少なくありません。

「細かい問い合わせに答えてくれない」
「アップデートについてこれなくなっている」
「結局“売りっぱなし”で、あとは現場任せ」
「定例会もマンネリ化していて新しい提案がない」

→この“倦怠期”にこそ、後発が入り込むチャンスがあるのです。

巻き返しのために必要な視点:「比較ではなく再定義」

後発ベンダーがやってしまいがちなのが、「ウチのほうが安い」「機能が多い」というスペック勝負。

これはほとんど刺さりません。
代理店にとって重要なのは、「営業現場で売りやすいかどうか」です。
後発は、「何が違うか」ではなく、
「今の提案に足りていない視点を提供する」ことで切り込む必要があります。

他社がすでに入っている代理店への“入り込み方”5ステップ

【STEP 1】 現場の“隠れた不満”を拾いに行く

  • 営業やCSが使いづらい資料の存在
  • 顧客に聞かれて答えに詰まる質問
  • キャンペーン時の対応遅れ

→本人たちも“仕方ない”と流しているが、後発が突ける“スキマ”がある

※CS: Customer Success(活用支援、継続利用・成果創出を支援する職能)

【STEP 2】 「今のままでは届かない顧客層」を言語化する

  • 例:「B社では価格訴求はできるが、業界特化提案が弱い」
  • 例:「SaaS型に移行する顧客に対応しきれていない」

→“別物”として並列ではなく、“使い分けが必要”という立て付けにする

【STEP 3】 最小単位で“使ってみる体験”を提供する

  • トライアル支援キット
  • 1商談限定のテンプレ展開
  • 営業1名×1顧客でのテスト提案

→ 「これはこれでアリかも」と思わせれば勝機がある

【STEP 4】 推進者候補を1人見つけて“点”で入り込む

  • 全社巻き込みは後回しでよい
  • よく提案する営業/教育に熱心なCSから攻める
  • 成果が出たら「その人の事例」として社内展開できる

【STEP 5】 本部・営業との定例フローに“自然に”滑り込む

  • 定例会の中に1枠だけ入れてもらう
  • 他社との比較ではなく「今の売れ残りリストから逆提案」する
  • 営業部門の“数字に貢献できる”構造を見せる

巻き返し成功の鍵は、「小さな成功」を“誰かの実績”にすること

「実は、あのテンプレ、営業の〇〇さんが初回提案に使ってくれて」

「〇〇店での商談は、競合よりウチの資料のほうが通りやすかったらしい」

こうした“局地的な勝ち”を積み上げていくことが、
後発ベンダーの最大のチャネル戦略です。

最後に:巻き返しは、“奪う”ことではなく“並ぶ”ことから始まる

代理店は、他社を切ることに慎重です。
だから、最初から「取って代わる」必要はありません。

  • “今まで通らなかった商談”にだけ提案してもらう
  • “売りやすさ”の観点で違いを見せる
  • “この領域ならウチ”という棲み分けを作る

──こうした小さな切り口が、やがて本命になる道筋を作ります。

後発だからこそできる価値提供は、必ずあります。
そして、それを設計できるのが、チャネル担当者の戦略力なのです。