見えない業務の構造的違い

営業活動にはSFAがあり、
マーケティングにはMAがあり、
顧客管理にはCRMがある。

企業活動において「行動を記録し、数値で把握し、改善する」仕組みはすでに常識となっています。
誰が、いつ、何をしたのか。それが見える化されているからこそ、現場と経営の意思決定がつながる。

ところが──
パートナー(代理店)に対する支援活動だけは、その仕組みから取り残されているように見えることがあります。

もちろん、すでにKPIを設計し、支援施策の効果を検証している企業も存在します。
しかし全体としては、「支援はしているが、それがどれだけ活用され、どう成果につながっているのか」を測定できていない企業が多いのではないでしょうか。

なぜ、支援だけが記録されない業務として残り続けてきたのでしょうか。

「支援」は“やっているつもり”で終わってしまう

たとえば、代理店に向けて以下のような支援が日々行われています。

  • 製品資料や提案テンプレートの配布
  • キャンペーン情報の共有
  • オンライントレーニングや営業ツールの提供
  • ナレッジやFAQの展開

これらは確かに「提供された支援」ですが、それが:

  • 誰に届いたのか
  • どこまで見られたのか
  • 活用されたか、されなかったか
  • 結果的にどの代理店が動いたのか

──といった行動や成果とのつながりが、記録されていないケースが多いのです。

支援がやったこととしてのみ存在し、結果と結びつかないものとして埋もれていく。
だからこそ、「やっているのに評価されない」「改善の手がかりがつかめない」という状態に陥りやすくなります。

なぜ、営業やマーケはKPI化され、支援はされないのか?

これは、決して努力不足や担当者の怠慢ではありません。
むしろ、業務の構造そのものに起因する要素がいくつか考えられます。

1. 行動の“主語”が社外にあるため、ログが取りづらい

営業やマーケティング活動は、社内の人間が動くものです。
そのため、SFAMAといったシステムに、行動を記録する前提が最初から組み込まれています。

一方で、パートナー支援は、支援の受け手=行動主体が代理店です。
つまり、外部の誰かが何をしたかを記録するには、別の仕組みが必要になるという構造的なハードルが存在します。

2.支援活動が「業務」として明確に定義されていない

SFAには「商談」「訪問」「提案」といった明確なアクションがあります。
MA
にも「配信」「開封」「クリック」といった測定単位が存在します。

しかしパートナー支援は──

  • 「案内した」
  • 「送った」
  • 「説明した(と思う)」

といった、曖昧で属人的な状態で進むことが多く、ログの粒度や形式が揃っていないために、KPI設計の前提が持ちづらいのです。

3.成果とのつながりが“遠く”、可視化しづらい

営業なら「商談受注」、マーケなら「クリックコンバージョン」と、行動と成果が比較的直結します。

一方で支援は、

「動画を見た」「理解した」「提案に使った」「受注した」

というように、間に複数のステップが挟まるため、成果との因果を証明しづらいという課題があります。

これもまた、「支援をKPIとして語るのが難しい」と感じさせてしまう背景の一つです。

北米企業では、KPI設計が進んでいるケースも

一方で、たとえば北米のSaaS企業などでは、支援活動に対して次のようなKPIを設けているケースも見られます。

  • トレーニング完了率
  • 資料閲覧率・時間・回数
  • 支援施策の消化率(例:キャンペーン参加)
  • 自己解決率(FAQ・ナレッジ活用)
  • 支援行動と商談化率との相関分析

もちろん、すべての企業が実施しているわけではありません。
ですが、「支援も評価されるべき活動」としてログ前提で設計された環境があるのは事実です。

日本でも同様の設計が不可能なわけではありません。
必要なのは、支援を数値化するに値する行為として見直す視点です。

おわりに:「評価されない支援」から、そろそろ卒業しませんか?

パートナー支援は、長らく「やっているけど、評価されない業務」になってきた側面があります。
しかしそれは、支援が価値を生まないからではなく、支援が見えない状態のまま放置されてきたからではないでしょうか。

今後、パートナーとの関係性がより戦略的になる中で、
支援活動の質を上げ、再現性を持たせていくには、見える支援の仕組み化が不可欠です。

そしてその第一歩は、
「そもそも、なぜ支援は可視化されてこなかったのか?」という問いに向き合うことから始まります。