
「捨てる?延命?再構築?」SharePoint 移行で失敗しないための業務アプリケーション棚卸しマニュアル
なぜ「棚卸し」が移行プロジェクトの成否を分けるのか
SharePoint Server 2016 / 2019の延長サポート終了が迫る中、
多くの企業が 「Microsoft 365(SharePoint Online)への移行」を検討しています。
しかし、実際にプロジェクトを始めると誰もが直面するのが次の課題です。
「そもそも、今どんなアプリが、どの部門で、どう使われているのかがわからない。」
SharePoint は長年にわたり、部門単位で自由にフォームやワークフローが作られてきました。
その結果、「誰も全体像を把握していない資産群」が組織内に点在しています。
つまり、移行の出発点は「技術」ではなく「棚卸し」です。
棚卸しとは、不要なアプリを削る作業ではなく、
「業務をどう残すか・どう再設計するか」を見極める工程なのです。
棚卸しの目的:移行対象を“見える化”して優先順位をつける
移行とは単なるシステムのコピーではありません。
「技術的に移せるか」と「業務として残す価値があるか」を両面から評価する必要があります。
棚卸しによって得られるのは、次の3つの視点です。
視点 | 内容 | 意義 |
|---|---|---|
利用実態 | どの部門がどの頻度で利用しているか | 実際に必要なものを見極める |
技術依存度 | InfoPath/Designer/.NETなどの利用有無 | 移行難易度の判断材料になる |
業務重要度 | その業務が止まると何が起きるか | 投資優先順位を決める根拠になる |
この3軸をもとに、「Microsoft 365移行」「延命」「再構築」「廃止」の判断を行うのが目的です。
ステップ①:アプリ資産を洗い出し、リスト化する
まず行うべきは、現行環境の「可視化」です。
SharePoint のサイトコレクション単位で棚卸しを行い、以下のようなExcelリストを作成します。
■棚卸しテンプレート項目例
アプリ名 | 利用部門 | 技術構成 | 外部連携 | 最終更新日 | 利用頻度 | 担当者 | 備考 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 代理店申請フォーム | 営業企画 | InfoPath + WF2013 | あり(CRM連携) | 2024/03 | 高 | 山田 | 現在も毎週利用 |
2 | 勤怠申請 | 管理部 | SharePointリスト | なし | 2022/07 | 中 | 佐藤 | Microsoft 365標準機能で代替可能 |
3 | 商品レビュー管理 | マーケ | .NETカスタム | あり(外部DB) | 2019/11 | 低 | 不明 | 廃止候補 |
この一覧は移行・再構築の設計図になります。
技術構成の列で「InfoPath」「SharePoint Designer WF」「.NET」が混在しているほど、後工程で複雑化します。
ステップ②:移行難易度をスコアリングする
単にアプリ数を把握しても意味がありません。
「どこから手を付けるか」を決めるためには、移行難易度×業務重要度のマトリクス化が有効です。
評価軸 | 観点 | スコア例 |
|---|---|---|
技術依存度 | InfoPath/WF/.NETなどの利用度 | 1(標準機能)〜5(カスタム依存) |
業務重要度 | 業務停止時の影響度 | 1(軽微)〜5(重大) |
外部連携 | 外部APIや他システムとの結合 | 1(なし)〜3(複数連携) |
■優先度マトリクス(例)
重要度:低 | 重要度:高 | |
|---|---|---|
難易度:低 | 早期移行(Power Automateで代替) | 優先移行(Microsoft 365標準機能へ) |
難易度:高 | 延命または廃止検討 | 再構築(PRMONEなどローコード基盤) |
これにより、「早く動かせる領域」と「慎重に再設計すべき領域」を分けられます。
ステップ③:「捨てる・延命・再構築」で分類する
棚卸しとスコアリングを終えたら、具体的な方針を3分類します。
方針 | 対象アプリの特徴 | 推奨対応 | 使用技術・ツール例 |
|---|---|---|---|
捨てる(廃止) | 利用頻度が極端に低く、代替手段あり | アーカイブ・削除 | Excel等で履歴保存 |
延命 | 簡易なWFや単純参照のみ | Microsoft 365+Power Automateへ移行 | 標準機能/Teams連携 |
再構築 | InfoPath+WF+.NET連携など中間層 | PRMONEなどローコード基盤で再設計 | HTML/JSフォーム+ワークフロー |
特に「再構築」領域は、単なる技術移行ではなく業務再設計プロジェクトとして扱うべきです。
ステップ④:棚卸し結果を経営判断につなげる
棚卸しで整理した結果は、IT部門内だけで終わらせてはいけません。
最終的には、経営・現場・ITの三者合意による再構築ロードマップを描く必要があります。
期間 | 実施内容 | 目的 |
0〜3か月 | 現状把握と棚卸し完了 | 対象範囲・スコープ明確化 |
3〜6か月 | 再構築PoC 実施(PRMONEなど) | 技術・業務両面の適合検証 |
6〜12か月 | 全体再設計・移行実行 | 再利用・拡張を意識したプラットフォーム化 |
このプロセスにより、単なる「移行コスト削減」ではなく、
「業務ロジックの再資産化」という視点に変わります。
棚卸しの本質:削るのではなく、“選び直す”こと
棚卸しは、過去を切り捨てる作業ではありません。
むしろ、「何を未来に残すかを選び取る」意思決定プロセスです。
- 使われていないフォームには、不要になった理由がある
- 延命されているアプリには、暗黙の知恵がある
- 再構築が必要な仕組みには、企業文化やノウハウが宿っている
PRMONEは、これらの“再構築すべき中間層アプリ”を安全かつ柔軟に再生するための基盤です。
それは、SharePoint 移行の終点ではなく、新しい業務DXの起点でもあります。

